僕の瞳に映る君 - さがちこ
内容紹介
にこにこちゃん。隣のクラスの女の子。
いつから彼女に見つめられていたのか、僕にはわからない。
自分で言うのもなんだけど、どうやら僕は衆目を集めるタイプの人間だから、誰かの視線を感じることは日常茶飯事。
親しみ。好意。尊敬の念。
好奇心。野次馬根性。あら探し。
そういうものに混じって感じた、困惑。
視線をたどると、いつも彼女がいた。
第16回星の砂賞 審査員奨励賞
『僕の瞳に映る君』
あぁ、またあの子に見られている。
あの子に見つめられると、居心地が悪くなる。心がザワザワする。
背中のあたりにジンワリと嫌な汗をかいて、心臓が急にその存在を主張する。
ゆっくり3秒数えてから目を逸らして、周囲に気付かれないように深呼吸をする。
心臓がおとなしくなって心が静まるまで、時間にしたらきっと数十秒。
けれどその数十秒が、永遠にも思えるほど長くて。
僕らしくいられなくなるから、あの子のことは少し苦手。
にこにこちゃん。隣のクラスの女の子。
編集部より
人に造られた人間、「試験管ベビー」で溢れた近未来の中で、「僕」だけは「試験管じゃないベビー」だった。
生まれたときに失った、片目を除いて。
その片目は、「彼女」と「共鳴」する――。
人の手で人が造られる近未来、人間である「僕」と、人間ではない「にこにこちゃん」は、まるで真逆の性格。
物事をずっと冷静に考える「僕」と、感情豊かに一喜一憂する「にこにこちゃん」の、少し変わった、キューンと響く、初恋……?