欲しいのはそれじゃない。~妹にすべて譲った私を、我儘で俺様な悪魔が狙ってきます~ - 真白燈
内容紹介
「おまえが俺を召喚したのか?」
低く、それでいて耳に残る声。
男はじっと私を見つめた。私もまた、目の前の男を見つめ返した。
金色の瞳。鼻は高く、すっと筋が通っている。濡れたような黒い髪はサラサラと流れるようで、男の持つ妖しい雰囲気を引き立てていた。凛々しい眉も、先ほどちらりと見えた鋭い犬歯も、どこか野生動物のような……。そう、狼を私に連想させた。
容姿だけでも十分異質な存在なのに、男の背中には、人間にはない黒い翼が生えていた。加えて頭には角のようなものまで生えている。幼い頃、読んだ本に出てきた特徴と一致する容姿。
――今、私の目の前にいるのは、悪魔だ。
何でも願いを叶えてくれる代わりに人間の魂を代価とする。
人間を常に誘惑し、悪の道へ誘いこもうとする、恐ろしく、醜い生き物。私の目の前にいる悪魔はなぜか整った容姿をしているが、これは仮の姿なのだろうか。その容姿で私を陥れようと企んでいるのか。
彫の深い顔立ちは人ならざる美しさがあり、それゆえ本来なら怒りを露わにした表情は、震えあがるほど恐ろしく見えることだろう。悲鳴をあげて、逃げ出すべきなのかもしれない。
だが私は、ただただ、美しいと思った。
「おまえが俺を召喚したのか?」
その姿を目に映した時、ミシェルは今まで感じたことのない激しい思いに駆られた。相手は人間の魂を奪う悪魔だというのに。
ミシェルに執着心はない。綺麗なお人形も、ドレスも、両親の愛情も、婚約者も、何でも妹に譲ってきた。そんな彼女はある日地下室で悪魔――レドと出会う。
彼は自分を召喚し、魔法陣に閉じ込めた人間を恨んでいた。呼び出した相手を殺そうとする彼を止めるため、一緒に屋敷で生活することになったミシェル。
レドはあれが欲しい、これをして欲しいと我儘放題。けれど意外にも優しい一面もあり、ミシェルは次第にレドに惹かれていく。
そんな時、妹のマーガレットが現れて、レドと仲良くなりたいと言い出して――?
無欲な令嬢と我儘で、時々ツンデレな悪魔が織り成す、ちょっぴり怖くもあり、甘く激しい恋の物語。
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
執着心がなく、どこか浮世離れしたような令嬢・ミシェルと、我儘で俺様、そして時々デレる悪魔のレドが織りなす恋物語。
屋敷での暮らしにも馴染み、レドへ徐々に心惹かれていくミシェルでしたが、幼い頃から姉のものをなんでも欲しがる義妹・マーガレットがレドに目をつけ……
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