十年我慢した公爵夫人が浮気夫を捨てたら愛する家族ができました - 羊蹄

内容紹介
「テオドール様、どうしてここに……」
「ポーリーン様のお父上から要請を受けまして」
精悍な顔つきで、ポーリーンを見つめる。真面目と誠実を絵に描いたような青年は、硬い表情で一礼した。
(お父様も、どうしてテオドール様に……?)
父とホイットモー小侯爵は仕事上の付き合いでもあったのだろうか。少なくとも、ポーリーンはまったく聞いたことがない。
けれど、こうしてテオドールがやってきたということは、父と知り合いなのだろう。
健康的に焼けた肌に、漆黒の髪。誠実さがにじむ、切れ長の目の奥には、夜よりも黒く輝く瞳が見える。がっしりとした体躯は、貴族の嫡男というよりも、王室の近衛騎士であるといわれたほうがしっくりくる。実際、騎士団に交じって剣術や馬術の訓練をしていた時期もあったらしい。
家柄と見た目も相まって、彼は社交界でも非常に女性人気が高い。二十五歳という、結婚適齢期をやや過ぎた年齢ではあるものの未婚。婚約者もおらず、浮いた話も一つもない。お誘いしてもすべて丁寧にお断りされる、という話を聞いたことがある。
その理由が、ずっと一人の女性を思い続けているため、他の女性には見向きもしないらしい、という噂もあったが、真偽のほどは定かではない。
ついにこの10年我慢してきた浮気性の夫であるクロード・オクレール公爵に離縁状を突きつけて家を出たポーリーン。心機一転、小さな家を借りて働きだしたが夫はなかなか離縁に同意してくれない。豪商である父の新店舗お披露目パーティの準備中、店舗前で赤ちゃんを抱いた瘦せた幼い少年を見つけ、ポーリーンは彼らの家族の捜索を開始した。
元夫を頼りたくないポーリーンの元に、友人の兄、テオドールが協力者として名乗り出てくれた。テオドールの真意は読めないが、真摯に子どもたちの調査を協力してくれる誠実で実直な彼にすこしずつ心を惹かれながらも、ただの友人として接することしかできない日々が続いていた。
そんなある日、調査から戻ったテオドールから、赤ちゃんを探しているという怪しい男の噂と、女性の遺体が発見されたことを聞く。噂の人物は幼い二人の家族なのか。幼子たちの幸せを願うポーリーンの不安と葛藤をよそに、ある日突然テオドールが姿を見せなくなった……。
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
10年間、浮気夫に耐え続けた公爵夫人ポーリーン。ついに離縁状を突きつけ、新たな人生を歩み出します!
心機一転、働き始めた彼女が出会ったのは、置き去りにされた幼い少年と赤ちゃん。元夫には頼らず、二人の家族を探すことを決意したポーリーンの前に、友人の兄・テオドールが協力者として現れます。
真意が読めないテオドールに、少しずつ心を惹かれながらも、あくまで友人として接するポーリーン。しかし、謎の男の噂や遺体発見の報が入り、二人の子どもたちの未来をめぐる不安が募る中、頼れるテオドールが突然姿を消してしまい……。
電子書籍版では番外編「ユーゴと父さん、テオドール」を収録。
『引きこもりの私に求婚した相手は離れに愛人を囲っているようです』に登場した、公爵夫人ポーリーンのその後を描いた、幸せな家族を作る物語。未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!
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www.hoshi-suna.net