皆々様、平安カウンセリング相談所へようこそ! - 栗栖あごた
内容紹介
「どうしたんだ、あこや。急に立ち上がっては危ないよ」
心配そうにその男性は言った。
あまりに驚き、色白で細身の彼をまじまじと見てしまう。ぶかぶかの黒みがかった光沢のある着物に、頭には濃い紫の烏帽子。平安絵巻に出てくる衣冠束帯を身に付けている。この前、天皇即位式のテレビ中継で見た皇族の衣装そっくりだ。その中継の解説で確か、この高級そうな黒い装束は皇族や身分の高い貴族だけのものと聞いた覚えがある。
そのうえしかも自分まで―― 。
えーっ、これって、おひな様が着ている十二単じゃない……?!
何枚か重ね着している着物は、ピンクの濃淡のグラデーション。しかも一番上は白っぽい手の込んだ透かしの花模様入りだ。
ななな、なんで……!?
あまりに仰天したが、気を静めて尋ねてみる。
「あのう、今、私のこと、あこやって、言いました?」
「もちろん」
「それで、あなたは一体、どなたですか?」
すると、相手は目を白黒させた。
「これって、映画かドラマの撮影ですか?」
こちらは至って真剣に聞いたのだが――。
「もう、ふざけないでおくれ。お前はあこや、私は兄の邦正、決まっておるではないか」
苦労の末に臨時の学校カウンセラーになれた美山るいだったが、突然のリストラに遭い意気消沈。やけ酒をして目覚めると、平安時代の貴族、あこや姫に意識だけ転移してしまっていた。
混乱の中、あこやの兄である邦正が宮中で同僚の貴族達からあだ名をつけられイジメに遭っていることを知る。しかも、まさかのヒキコモリになっているという。正義感に駆られたるいはあこやになりきり、カウンセラーとして兄を再起されようと奮闘するのだった。
無事に兄の評判を上げることに成功すると、あこやの評判まで上がり、相談に乗ってほしいという依頼が舞い込んでくる。その中には今を時めく大貴族の御曹子で超イケメンの藤代兼嗣の姿も。どうやら彼の妹のことで心配事があるらしい。妹思いの彼と話をするうちに彼の人となりを知り、目が合うだけでドキドキするるいだったが――。
編集部より
ミーティアノベルス書き下ろし作品!
臨時とはいえ希望していたスクールカウンセラーになれた美山るいでしたが、突然の解雇。
やけ酒を飲んで目覚めたるいは、平安時代の貴族「あこや姫」になっていました。
戸惑いながらも自分の状況を把握していくあこや姫(るい)でしたが、兄・邦正が同僚の貴族達からイジメに遭っていることを知ります。
カウンセラーとして兄を再起されようと色々作戦を立てるあこや。やがてあこや姫の評判を聞きつけた人々が集まり、その中には今を時めく大貴族の御曹子で超イケメンの藤代兼嗣もいて――。
果たしてるい/あこやの運命は? ぜひ、本編をお読みください!