婚約破棄されたうえに投獄された令嬢ですが、毒親もモラハラ婚約者もいない牢獄は快適です - 佐藤謙羊
第1巻 内容紹介

セラフィスと呼ばれた彼は、ゆっくりとメデューサに向かって歩を進める。
足元からじょじょに光に照らし出されたのは、白を基調とし、金の刺繍で彩られたサーコート。
背中にはフェルニクス王国のエンブレムである不死鳥が施されている。
それは戦いというよりもダンスパーティにでも招かれたような、豪奢で軽やかな装いであった。
外からの光をスポットライトのように浴びながら現われたのは、豊穣たる小麦畑を思わせる金色の髪。
そして、見る者をホッとさせるような髪に反比例している、鋭く冷たいアイスブルーの瞳。
ふたつのミスマッチが美貌をよりいっそう引き立てていて、人ならざるものですら息を飲むほどの美しさであった。
メデューサの声が、いっそう艶を帯びる。
「なるほど、男嫌いの聖獣ですら懐くという噂は真のようだ」
「ユニコーンのことなら、外で僕の帰りを待っているよ」
「ふん、その美貌によほどの自身があるようだな。だが、わらわからすればまだまだ青二才よ」
「そういえば今朝は、宮殿のレディたちがいつもより騒いでいたね。何かと思ったら、今日は僕の二十四回目の誕生日だったよ」
「婚約破棄だ、フェアリーっ! お前には、火あぶりすら生ぬるいっ!」
魔女の疑いを掛けられてしまった令嬢フェアリーは、第2王子ジャクヒンから婚約破棄を言い渡され、王都にある塔に投獄されてしまう。
誰もが、魔女は絶望の淵に突き落とされているだろうと思っていたのだが、彼女は違っていた。
「やっと、ひとりになれた……」
毒親と妹にひどいいじめを受けていたフェアリーは、牢獄暮らしを喜んでいた。
ひとりぼっちを漫喫するフェアリーだったが、親を失った雛鳥を助けたことで、鳥たちから懐かれるようになる。
鳥たちが取ってきてくれる木の実や果物で、みすぼらしかった見た目はどんどん健康的になっていく。
さらに【氷薔薇の熾天使】と呼ばれるセラフィス公爵の愛鳥を治したことから、見染められ……。
ひとりぼっちの魔女と、誰にも心を開かない天使の、不器用な恋の物語が始まる――。
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
公爵令嬢のフェアリー・アン・トワネットは、ある日突然、婚約者である第一王子ザカンを「呪殺しようとした」という無実の罪を着せられ、婚約破棄された上〝黒点の塔〟に投獄されてしまいます。
普通なら絶望のどん底……と思いきや、意外にも牢獄生活は快適そのもの!? 毒親やモラハラ婚約者のいない、静かで自由な日々をむしろ満喫しはじめるフェアリー。
そんな彼女の前に現れたのは、「氷薔薇の熾天使」と呼ばれるセラフィス。雨の魔女(フェアリー)を成敗しにきた彼ですが、フェアリーの不思議な力と穢れなき心に触れ、次第に彼女に惹かれていき……?
婚約破棄と投獄から始まる、まさかの快適牢獄スローライフ!
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