死に戻りの侯爵夫人は夫に別れを告げて魔導書の写本師となる - 柳葉うら
第1巻 内容紹介

廊下の先で夫のセリウス・エッジワースと目が合った。
セリウスもまた端正な顔立ちで、見る者が畏れ崇めるような冷たい美貌を湛えている。
白皙の肌によく映えるエメラルドのように美しい緑色の目。月を彷彿とさせる銀色の髪は短く整えられている。すらりと背が高く、ローレルは彼と話す時は見上げなければならない。
「あ、あの、セリウス様。今度の週末に修道院を訪問する件で相談したいことがあるのですが――」
ローレルはありったけの勇気を振り絞り、か細い声で自身の夫に話しかける。
そんなローレルを、セリウスは無表情で見つめる。
「……王女殿下がお見えになる。悪いがあとにしてくれ」
(また……王女殿下なのね)
ローレルの胸がずきりと痛んだ。
侯爵夫人のローレルは、夫のセリウスが仕事と幼馴染の王女ばかりを優先することや、その王女と使用人たちから虐められる日々に疲れていた。結婚して三年が過ぎたある日、唯一の息抜きである魔導書の図書館へ行った帰りに馬車の事故に遭い、ローレルは命を落としてしまった。しかし、気付くと三年前の結婚式を挙げたばかりの頃に回帰していたのだ。
これは女神様から与えられたやりなおしの機会だと思ったローレルは、遠征中で不在のセリウスに別れの手紙と離婚届を残して魔導書の写本師として新しい人生を歩みはじめた。しかし、予定よりも早く遠征から帰ってきたセリウスが取り乱すほどローレルを心配し、ローレルの魔力をたどって探しに来た。前の人生ではローレルに全く興味を示そうとしなかったのに、離婚するつもりはないと言って屋敷に連れ戻そうとする。縋りつくようなセリウスの態度に戸惑うローレルだが、さんざんみじめで悲しい結婚生活を送ってきたローレルの決意は固く――。
これは、夫に別れを告げて新しい人生を歩もうとするローレルと、そんなローレルへの愛に気づいて己の行いを猛省し、ローレルとの関係修復に奮闘するセリウスのすれ違いの恋のお話。
編集部より
ミーティアノベルス書き下ろし作品!
主人公は、三大侯爵家に嫁いだローレル・エッジワース夫人。誰もが羨む美貌と気品を持ちながらも、その結婚生活は決して幸せなものではありませんでした。
仕事一筋で自分に関心のない夫・セリウス。夫の幼馴染であるナディア王女からは執拗ないじめを受け、屋敷の使用人たちからも蔑まれる日々。心休まる場所もなく、ローレルは孤独と絶望の中で耐え続けていました。
そんなある日、ローレルは不慮の事故で命を落としてしまいます。死の間際に「もしもやり直せるのなら、今度は自分を殺さずに生きていたい」と強く願った彼女が目を覚ますと……なんと、夫と結婚する前――ではなく、結婚して一週間の時点に時間が巻き戻っていたのです!
二度目の人生、ローレルはもう惨めなだけの侯爵夫人でいることをやめました。夫に別れを告げ、貴族の身分も豪華なドレスも捨てて、たった一人で屋敷を飛び出します。彼女が目指すのは、幼い頃から夢見ていた「魔導書の写本師」として、自分の力で生きていくことでした。
果たしてローレルは、過去の呪縛を断ち切り、新たな人生で幸せを掴むことができるのでしょうか? そして、死に戻ったことで変化を見せ始める夫・セリウスとの関係は……?
一度は全てを諦めた侯爵夫人が、自らの手で未来を切り拓く、感動のやり直しストーリーをぜひお楽しみください!
