電子書籍「ネット文庫星の砂」

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「〝いらない子〟だった少女がちゃんと幸せを噛みしめるまで」 - 万丸うさこ

〝いらない子〟だった少女がちゃんと幸せを噛みしめるまで - 万丸うさこ

内容紹介

 ふわりとした浮遊感の少しあとで、静まった光と浮遊感に恐る恐る目を開けた。
 結論からいえばそこは異世界で、謎の光は異世界から聖女を呼ぶための転移魔法陣だった。
 そしてもちろん、聖女は私ではなかった。
 異世界のとある王国が、魔物とそれを発生させる邪気から国を守る結界を修復するために地球から呼んだのは、女子高生の聖月さんのほうだった。
 そうだよねって思った。
 もう名前からして、だよねって。
 聖女が二子って名前はないよねって、思った。
 どちらが聖女かを鑑定するために急きょ呼ばれた魔術軍の支援術師団長と王太子殿下が、「いつ日本に帰れますか」と聞いた聖月さんへ「帰れない」と気まずそうに答えていた。
 聖月さんは日本に帰れなくて泣いていた。
 お父さんとお母さんとお兄ちゃんとおじいちゃんとおばあちゃんと飼い犬のラッキーにもう二度と会えない。友達とは来週、楽しみにしてた映画を見に行くって約束したのに、って。
 今日はテニスの試合だったのに。試合に勝てたら試合前の食事制限のために我慢していたケーキを食べようと思っていたのにと、泣いた。
 愛する人たちと会えないこと、煌めいていた日常生活に二度と戻れないことを聖月さんは嘆いていた。
 私も泣いた。
 戻らない日常や、二度と会えない家族のために泣いたんじゃない。
 結局この世界でも私はいらない子なのだとわかったから、泣いた。

 
 結局、この世界でも私はいらない子なのだとわかって、泣いた――。

 家族から不用品扱いされていたニコは、ある日、女子高生と一緒に異世界に召喚された。
 鑑定魔法の結果、ニコは聖女である女子高生の〝おまけ〟だったので、ここでも……と、失望したニコ。
 異世界ではローデンヴァルト侯爵家の後見を受けて生活するうち、ニコは彼らの温かさに気づく。特に侯爵の孫であるアロイス様はニコに優しかった。
 スマホも与えられず友人もいなかったニコは、聖女の結界修復の旅に同道しているアロイス様が旅先から送ってくれる手紙を楽しみに待つようになった。初めて人と手紙をやり取りをし、自然と彼を特別に思うようになっていった。
 だけどニコには、誰かの幸せのために自分が必要とされる自信がなかった。
 だって自分は〝いらない子〟だから……。

 これは実の家族にすら不要とされていた少女が、聖女のおまけとして召喚されてしまった異世界で幸せを見つけるまでの短いお話。

 

編集部より

 人気作品がミーティアノベルスに登場!

 家族から「いらない子」として扱われ、新しい服もおもちゃも、習い事すらさせてもらえなかった二子。
 ある日、高熱で苦しむ二子を家に残し、家族は姉の発表会へ出かけてしまいます。
 薬を買うため、ふらふらでドラッグストアへ向かった二子は、そこで女子高生の聖月さんとぶつかった瞬間、謎の魔法陣に包まれ異世界に召喚されてしまいました。

 聖月さんは国を救う「聖女様」として歓迎されますが、二子はただの〝おまけ〟。
 異世界でも「いらない子」なの……? と絶望する二子でしたが、彼女は魔術軍の支援術師団長であるローデンヴァルト侯爵家に引き取られることになります。
「娘ができたみたい」と温かく迎えてくれる侯爵夫妻。さらに、聖女様の旅に同行する侯爵家の息子・アロイス様とは、ぎこちないながらも手紙のやり取りが始まり……。

 電子書籍版特別書き下ろしでは、ニコと聖女が消えた後のそれぞれの家族の様子や、ニコとアロイスの関係といった気になる〝その後〟を追加。
〝いらない子〟だった少女が、自分の居場所を見つけ、幸せを噛みしめるまでの物語。
 未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!
 

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