毒親の元で妹に縁談を奪われ続けていたら初恋相手が何やら画策し始めた模様です - 春乃紅葉

内容紹介
「うーん。スライス侯爵家の次男坊か」
「あら、次男なの? 最近、質が落ちてきたわね」
私の父、ロジエ伯爵が婚約の申し込みについての書状を片手に唸り声をあげると、その隣で母は落胆して溜め息をついた。
しかし妹のカーティアだけはイスから飛び上がって喜んでいる。
「まぁ、素敵! 彼はとても見目麗しい青年だと聞いておりますわ!」
「そうか? カーティアは何と気立てのよい娘なのだ。よし。会いに行ってみるか! カーティア、何色のドレスがいいか?」
「えっとぉ~。仕立屋を呼んで、布から選びたいわ!」
「よし。明日にでも仕立屋を呼ぼう!」
「楽しみだわぁ~」
さてさて。この会話を耳にするのは何度目だろうか。
これは、いつもと変わらぬ夕食中のやり取りだ。
婚約を申し込む書状が届き、両親が品定めをし、妹は喜んでドレスをねだる。
幾度となく目にした光景である。
それは、いつまでも婚約が成立していない、という意味も含まれている。
両親と妹が退室したあと、テーブルに残された書状を手に取った弟のアルドは、苛立ちながら私の目の前に書状を突きつけた。
「ベル姉様、またじゃないですか!? ほら、これはベル姉様への婚約の申込書ですよ!?」
「そうね。また、だわ」
これは私、ベルティーナ・ロジエへの婚約の申込書だ。それを毎回、妹が奪っていくのだ。
ロジエ伯爵家の長女べルティーナ宛に届いた縁談申込書を見たロジエ伯爵は、今日も彼女の妹であるカーティアへ縁談を回してしまった。
両親は、幼少期から病弱で辛い思いをしてきた妹にこそ、よりよい条件の名家に嫁ぎ幸せになってもらいたいと思い、べルティーナに来る縁談をほぼすべて妹に回し、婚約を結ぼうとしていたのだ。
しかし、そんなことが上手くいくはずもなく二年が過ぎようとしたある日、高齢のアーノルト辺境伯から後妻としてべルティーナを迎え入れたいと婚約の申し込みがあった。アーノルト辺境伯はべルティーナの初恋の相手でもあるヨハン・アーノルトの父だ。べルティーナは驚くものの、辺境伯に嫁ぐことを決意する。しかし、この縁談はヨハンの画策で──。
これは、ヨハンと共にベルティーナが両親との確執を乗り越え、諦めていた自分の人生を取り戻すお話。
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
主人公は、ロジエ伯爵家の長女ベルティーナ。成績優秀で常に首席であり続ける彼女ですが、両親の愛情は病弱だった妹のカーティアにばかり注がれ、家族の中で居場所のない日々を送っていました。あげくの果てには、ベルティーナに来るはずの縁談を「可愛い妹のため」と、ことごとく奪われてしまいます。
そんな姉の不遇な状況に、ついに弟のアルドが立ち上がります! 彼が協力を仰いだのは、ベルティーナの学生時代のライバルで、初恋の相手でもある辺境伯令息のヨハン・アーノルトでした。
早速、彼らの計画によってアーノルト家から新たな縁談が舞い込みますが、その内容はなんとヨハンの父である辺境伯の後妻になるというもの! ベルティーナはこの家を出るためならと縁談を受け入れますが、ヨハンの真意は一体……?
毒親とわがままな妹に利用されるだけの日々から、ベルティーナは抜け出すことができるのでしょうか? 初恋相手が仕掛ける、一世一代の救出劇の行方は――? 逆転ラブストーリーをぜひお楽しみください!
電子限定書き下ろしでは、ベルティーナの弟と妹の縁談のお話や、大好きな孫達に泣かれてしまう辺境伯様のお話、ベルティーナとヨハンのその後のお話をたっぷりお届け!
未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!
