私を裏切っていた夫から逃げた、ただそれだけ - キムラましゅろう

内容紹介
一年半ものあいだ夫と暮らしていた家を飛び出して、半年になる。
クララは暮れゆく夕刻の空を眺めた。
(ここもそろそろ引き上げなくてはならないかしら。だけど、ウォレスがなぜ私を追ってくるのかがわからないわ……。もう私なんて邪魔な存在でしかないはずなのに)
(だから王都で他の女性とあんな関係に……)
癒し手である治癒魔法に特化した魔力保持者を絶やさないため、国は医療魔術師に婚姻と出産を義務付けている。
その政策により結ばれただけの妻など、目の前から消えてくれて清々しているはずなのだ。
いや、だからこそ追うのだろうか。
医療魔術師の妻と婚姻を継続できていない現状がバレたら困るから――。
ウォレスを困らせるのは本望ではない。だからこそクララは離縁はせず、戸籍はそのままで姿だけを消したのだ。
てっきり夫は、手紙ひとつを残し姿を消した妻など捨ておくものと思っていた。
それなのに自分を探しているという。
なんのために? わからない。
「裏切ったのはあなたなのに」
クララの脳裏に、あの日見た衝撃的な光景が浮かび上がる。
赴任先の王都で、夫が自分以外の女性に口づけをしていた光景が。
「っ……!」
思い出すだけで今でもこんなにも胸が苦しくて、辛くて悲しくて堪らないというのに。もうこれ以上かき乱さないでほしい。
(私は消えてあげたのだから、もう勝手にすればいい)
フリーの医療魔術師として各地を転々としていたクララは時折、今は過去のことになりつつある夫ウォレスとの日々を思い出していた。
彼はどうして妻である自分を裏切り、他の女性と暮らしていたのか。愛しあっていたと思っていたのは自分だけだったのか。
その事実から目を逸らし、自分を裏切った夫から逃げてきたというのに、クララの心は今もウォレスに囚われていた。
しかしそんな時、クララはウォレスが血眼になって自分を探しているという事を知る。
なぜウォレスが自分を探すのか理解できず再び逃げ出すクララ。
そうしてウォレスから逃げる中で、クララはとある町の教会を訪れることに。そこで出会った老人の言葉から、クララの記憶の中にあった点と点が繋がっていく。そしてウォレスの過去と秘密が明らかになったその時、クララは……。
切なくも胸熱必至のハッピーエンド!
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
自分を裏切って他の女性と暮らしていた夫・ウォレスが、忘れられないクララ。
医療魔術師として各地を転々としていたクララですが、ウォレスが自分のことを探していると知ります。
逃げ続けるクララでしたが、ウォレスの秘密と過去を知り……
電子書籍版では本編後のエピソードを特別に書き下ろしたものを収録。
未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください!