幕末に転移したら、坂本龍馬の妻になりました - 時尾美かた
内容紹介
「おりょう、何を言っとる?」
着物の男性はこちらを見て言った。
「おりょう? 私が?」
そういえばさっきから、おりょう、おりょうって、呼びかけてくれるけど、おりょうといえば、坂本龍馬の妻の名前だ。
「まさか、自分の名まで、分からなくなったのか?」
不安げに告げるこの人は、やっぱり坂本龍馬にしか思えない。
ふと自分の袖口が目に入り、驚いてしまう。身に付けていたのはお気に入りのワンピースではなく、なぜか着物。もしかして髪型まで変わっているんじゃないだろうかと、自分の頭を触っていると、
「鏡、見ますか? ここにありますよ」
気が利くカメラマンが手鏡を差し出した。
「に、日本髪……? てか、私じゃない!」
髪型が違っていたことにびっくりしている場合ではなかった。鏡に映っているのは私ではない。
ずっとコンプレックスだった丸顔はうりざね顔に。目の下のホクロもなかった。というか、ここにいるのは、以前資料で見たことのある龍馬の妻『おりょう』そのものだ。
「うそでしょう?」
目をつむり自分の頬をつねってから、再び目を開けて手鏡を覗いてみた。しかしそこにいたのはやはりさっきと何ら変わらない『おりょう』だ。
「何でこんなことに……?」
坂本龍馬のことが大好きな歴女、彩夏は彼を題材とした映画ポスターの前で写真を撮った瞬間、なぜか突然1867年の長崎へタイムスリップしてしまった!しかも坂本龍馬の妻、おりょうになってしまったようだ。
「おりょうとして暮らすしかないでしょう」
同じく令和から転移してきたというカメラマンの上野にそう言われ、戸惑いつつも憧れの龍馬と暮らし始めた彩夏のドキドキは止まらない!このまま妻として彼を支え、幕末で生きる決意を固めたが、転移した年が龍馬が暗殺される慶応3年であることに気付く。
大好きな龍馬が暗殺されることを知る彩夏は、彼を守る方法がないか上野に相談することに。しかし上野からは歴史を変えてはいけないと協力を得られなかった。それでもなんとか暗殺を阻止したい彩夏はとある方法を思いついた――。
編集部より
ミーティアノベルス書き下ろし作品!
意識が幕末に転移した彩夏。彼女の意識が入り込んだのは、坂本龍馬の妻・おりょうでした。
歴女で龍馬に憧れていた彩夏は戸惑いつつも喜ぶものの、夫となった龍馬が「近江屋事件」で暗殺されることを思い出します。
妻として彼を支え、幕末で生きる決意を固めた彩夏は、ある方法を思いつき――二人の命運はぜひ、本編をお読みください!