元婚約者はかつての令嬢に極上の愛を注ぐ - 清水苺
内容紹介
二人とも、『社長』と『副社長』という肩書を持っていた頃は、ぴりついた空気の中で仕事の話ばかりしていた。
それは食事中も、土日も関係ない。
本音を言うと、そんな両親の背中を黙って見ているのが、幼い頃は辛かった。
だが今では、実家に帰るたびに、穏やかで温かい家庭の空気を感じることができる。
居酒屋の常連客からいただいた物が飾られた棚は、訪れるたびに変わっていて、地元のみんなから愛されているんだと微笑ましく思えた。
花に囲まれる今の仕事も、お客様の幸せそうな笑顔を一番に見ることができて、毎日がとても充実している。
(だから、これで良かったの……)
かつては、いくらお金があっても、そこに家族の幸せはなかった。
けれど今は、みんなが幸せそうに笑っている。
これ以上の幸せを望むことは、きっと間違いなのだろう。
そんなことは分かっているけれど、たまにふと、考えてしまうことがある。
「……あなたは今、幸せですか?」
幼少期より社長令嬢として育てられてきた柳原望海は、19歳の時に、両親の経営する貿易会社が倒産してしまったことを知る。
それを理由に許婚との婚約も破談となり、『普通の人』となった彼女は、26歳になった現在、ワンルームで1人暮らしを送りながら、花屋の店員として優しい常連客やアルバイトに囲まれる、何不自由のない幸せな生活を送っていた。
しかし、いつも心の中で『何か大切なものが欠けているような気がする』と感じていた望海。するとある日、見知った男性がお店を訪れる。彼は竜崎商事の御曹司、竜崎高志。
望海の元婚約者にして、初恋の人だった。しかし、もう肩書も何もない望海にとって、高志は遥か遠くの存在。それなのに、「望海のことがずっと忘れられなかった」。
彼はそう言って、望海を強く抱きしめてきて──!?
編集部より
ミーティアノベルス完全書き下ろし作品!
社長令嬢として育てられていた望海は、両親の経営する企業の倒産により「普通の人」となりました。
元より贅沢を好む性格ではなかった望海は、現在は花屋で働いていて、優しい同僚や常連客に囲まれお金で買えない幸せを感じていました。
しかし心に刺さった棘のようにかつての婚約者を思い出してしまい――
現代を舞台にした婚約破棄(破談)の物語をぜひお楽しみください!