美貌の訳あり女装王子は運命の男装令嬢を逃さない - 羽鳥紘
内容紹介
ヒルデブランド家には一つの秘密があった。跡取りとして育てられた末子にして長男のこの私は、本当は第五女なのであって男ではない。
ヒルデブランドは武家、そして落ち目にある。一向に男児の産まれぬことに業を煮やした父上は、受け継いできた剣技と家督を託すため、私を長男として育てたのである。そして私の物心がつく前からひたすらに剣技を仕込んできた。
冗談ではない。別に剣技は嫌いではないが、疲れるし痛いし痣や擦り傷だらけになるし、汗まみれで剣を振り回すよりも、ドレスを着てお茶でも啜っていたいと思うのは当然だ。
何も白馬の王子様とまで言わない。そこまでの贅沢は言わないので、傾きかけた家を建て直すくらいの財力を持った爽やか美青年貴族が「迎えに来たよ」と囁いてくれないだろうか。そして私を厳しい剣の稽古から解放してほしい――などと夢見るのも、これまた当然である。そんなこと誰にも言えやしないけど。
「わたくし、この方と結婚しますわ!」
教会で誓いの言葉を口にしながら、クリスは一体どうしてこうなったのかを考えていた。
騎士の名門ヒルデブランド家は男児に恵まれず、当主は本来五女であったクリストハルトを長男とし、立派な騎士へと育て上げる。一方で、ファーレンベルク王国第一王女ジークリンデは、出生時「王子であれば国を滅ぼす」との不吉な予言をされ、男でありながら王妃によってそれを秘匿されていた。
王都でジークと運命的な出会いを果たしたクリスは、「互いの秘密を守るために結婚しよう」と持ちかけられ、承諾してしまう。しかし、城には国家転覆を企む影がうごめいていた。
男として育てられた令嬢、女として育てられた王子。同じ秘密を持つ二人の契約は恋へと変わるのか?
編集部より
ミーティアノベルス完全書き下ろし作品!
落ち目の武家の長男として育てられた女性・クリス。彼女は家の名誉(と安定した収入)のため、姫君の騎士を選抜する御前試合に出場することに。
そして城下町で出奔しようとしていたジーク姫に出くわしたクリスは、姫の秘密――女性として育てられた男性だということを知ってしまいます。
身分こそ高低がありますが似たような立場の二人。ジークはクリスに、御前試合をダシにした契約結婚を持ちかけ……
装い男女逆転ファンタジー、ふたりの関係の行方は!? ぜひお読みください!