退屈王女は婚約破棄を企てる - 中村くらら
内容紹介
「本日は皆様に聞いて頂きたいことがありますの」
茶会の始まりにはそぐわない重苦しい声音と表情に、皆が怪訝な顔になる。
少女は何事かを決意するように唇を引き結ぶと、上体ごと、自身の右隣に座る若い男に顔を向けた。
「わたくし、フェルベルク王国第四王女フローラ・フェルベルクは、バルツァー公爵家嫡男ユリウス・バルツァー殿との婚約を破棄致します」
抑揚なく発せられた少女の言葉に、皆が息をのんだ。円卓の三人はもちろん、侍女までが凍りつき、唖然として少女を見つめる。
時が止まったかのように誰一人身動きすらしない中、小鳥のさえずりだけが場違いなほど長閑に響いた。
「婚約を破棄致します」
庭園の東屋で、フローラは婚約者に婚約破棄を告げる。
ほんの二週間前、「婚約破棄してみようかしら」などと口にしたのは、退屈しのぎのほんの戯れだったはずなのに――。
末っ子の第四王女フローラは、お菓子と恋愛小説が大好きな十五歳。幼い頃からの婚約者である公爵家の嫡男ユリウスを、兄のように慕っている。婚約は穏やかに続いていくはずだった。けれど、ユリウスが留学先から美しい令嬢を伴って帰国したその日から、フローラを取り巻く世界は変わってしまったのだった――。
これは、恋を知らない王女と不器用な婚約者の、初めての恋のお話。
編集部より
人気作品がミーティアノベルスに登場!
第四王女フローラは、もう一人の兄のように思っていた婚約者・ユリウスとの、やや退屈ながら穏やかな生活を送っていました。
しかしそんな彼女の世界は、異国の令嬢・ロズリーヌを伴って帰国したことで大きく変わっていきます。
ロズリーヌに向けられる婚約者の態度、表情に、胸が締め付けられるフローラ。果たしてユリウスの本意とは――
電子書籍版では、フローラ達のその後を描いたほのぼの後日談を書き下ろしで追加。念願のクッキー作りに挑戦することになったフローラでしたが……。未読の方はもちろん、WEB版をお読みの方もぜひお楽しみください! 担当者絶賛の素敵な表紙にも注目です!