星降る夜は時を超えてあなたに逢いたい - 麻生かえで
内容紹介
運転席から降りてきたのは、同年代ぐらいの背の高い男性。シンプルなグレーのシャツに黒いパンツが細身の体型をさらにすらっと見せている。さらりとした前髪に切れ長の目、すっと高い鼻。美しく整ったその顔にドキッとしてしまう。
咄嗟にスマホをバッグにしまい、セミロングの髪を手で梳いて整えようとした。その仕草に気付かれたのか、目が合った私は思わず視線を外した。
男性が木枠のバックドアを観音開きにすると、本来は荷台のはずの部分に、後ろ向きのシートがしつらえてある。
「可愛い車でしょ。乗り心地も悪くないのよ」
ふふっと老婦人が笑う。
「莉玖、こちら今夜お泊めする、ええと……」
「あっ、高梨朱里です! すみません、突然に」
慌てて名乗ると、男性は目を細めて私を見つめ、微かに口角を上げた。
「ここはどこ?」
女性向け季刊誌の編集者として、ときめく出会いもないまま二十八歳になった高梨朱里は、進行中の企画がなかなか通らず連日残業していた。ある日、帰宅途中の電車内で寝落してしまい、慌てて飛び降りると、そこは見知らぬ駅だった。
途方に暮れる朱里だったが、偶然出会った親切な老婦人の妙に誘われ、孫の莉玖の車に乗って、レンガ造りの立派な洋館でお世話になることになった。まるで、別世界にワープしたような美しい場所で楽しい時間を過ごしていたのだが、朱里は自分が昭和にタイムスリップしている可能性に気がつく。
しかし、彼女は唐突に現代へ戻ってしまったのだ。
タイムスリップしたことがきっかけで、やるべきことが見えた朱里は企画を作り直した。そんな中、再び昭和にタイムスリップしてしまう。
いつ現代に戻ってしまうかわからない中、莉玖と惹かれあい、将来を約束するのだが……。
時空を超えた二人の恋のゆくえは――?
編集部より
ミーティアノベルス書き下ろし作品!
編集者として連日のハードワークに耐えかね電車で寝落ちしてしまった朱里。
目を覚ますと現代日本とは思えない場所にいた朱里は、親切な老婦人とその孫の莉玖に助けられました。
その後唐突に現代に戻った朱里ですが、再び莉玖たちのもとへと移動します。
自分の意思にかかわらず時を超えてしまう朱里。
果たして、二人の運命は……ぜひ本編をお楽しみください!