夏の終わりと君の破片 - 界達かたる
内容紹介
彼女に、ひまわりを食べる少女に出会ったのは――高校最後の夏休みだった。
八月二十七日、私は山奥にあるひまわり畑を訪れていた。本来ならうだるような暑さも忘れるほど見入る光景だが、その日は違った。
「むしゃむしゃ」と、畑の端っこでひまわりを貪っている影を見つけたからだ。
広大に咲き渡る花々に似た、鮮やかな金髪を持つ少女だった。当時私は一介の男子高校生に過ぎず、彼女のような髪を持つ者を目にするのは初めてだった。加えて、一心不乱にひまわりを頬張っている彼女の姿は、歪な滑稽さが私を誘っているように感じられた。
第16回星の砂賞【優秀賞】受賞作品
こぢんまりと咲かせた笑み。
方言混じりの、からかいにも似た問いかけ。
十年前の夏、ここには、ひまわりを食べる少女がいた。
将来への不安、期待、あるいは焦燥感。
夢見がちな日々に現れた夏の幻想は、皮肉にも私に、避けようのない現実を直視させる。
ひと夏の不思議な邂逅を綴った、現代青春ファンタジー。
編集部より
三田誠広先生を特別審査員にお招きし開催した小説賞『第16回星の砂賞』にて、最高位である「優秀賞」を受賞した本作。
ボーイ・ミーツ・ガールの体ではじまる物語はしかし、どこか歪で、グロテスクで……それでも読み終えたとき、本作は「青春小説」だと感じました。
夏という季節の持つ儚さ、物悲しさを覚え、胸の奥にじん、と響く珠玉の一作です。ぜひご一読ください。
- 作者:界達かたる
- 出版社/メーカー: ネット文庫星の砂
- 発売日: 2019/12/19
- メディア: Kindle版