人を愛せない呪われ侯爵に溺愛されました - 結月美鶴

内容紹介
「アイリーン様」
部屋を見回しているうちにノーマンが現れた。
「フレデリック様がいらっしゃいました」
「へ?」
その名前がタウンゼント侯爵のことだと理解するのに、数秒かかった。扉の前には豪奢な金髪をきれいに固めた背の高い男性が立っている。
てっきり呼び出されるものと思っていた私は、侯爵様が突然やってきたことに完全に面食らってしまった。
「あ、あの……お初にお目に掛かります。アイリーンと申します」
「ああ、話は聞いている」
深みのある低音が、素っ気なく返ってきた。恐る恐る視線を上げると、鈍く光る宝石のような碧い瞳がこちらを見下ろしていた。
噂に聞いていた醜さは欠片もない。鼻はスッと高く、薄い唇は真一文字に結ばれ、表情こそ険しいけれども顔立ちはきれいに整っている。目が合った瞬間、その美しさにドキリとした。
しかし彼のほうは不機嫌そうに目を細め、すぐさま隣に控える執事へ振り向いた。
「ノーマン、お前はいつも勝手ばかりするな」
花嫁探しは執事の独断専行だったと、突きつけられた瞬間だった。ノーマンは主の言葉をさらりと流して微笑んでみせる。
ライアン子爵の妾の子のアイリーンは、母が亡くなった14歳から子爵家に引き取られ、正妻である義母や義姉から虐げられる日々を送っていた。
父が事業で失敗し、使用人も皆やめたことで、アイリーンはメイド代わりとして使用人以下の扱いを受け、つらい日々を過ごしていた。ついには母の形見のブローチまで義母に売られてしまう。
そんなある日、父から恐ろしい噂の絶えないタウンゼント侯爵家に嫁げと言われたアイリーン。お金で買われるようなものであったが、迎えに来ていたのは母のブローチを買った男で侯爵家の執事だった。
執事からしてみると、結婚に興味のない当主のために、あの手この手を尽くしてようやく捕まえた花嫁候補がアイリーンだったのだ。
屋敷で会ったフレデリック・タウンゼント侯爵は、愛想は悪いものの噂ほど怖い男ではないようだった。 どうやらタウンゼント侯爵家は何代にもわたり人を愛せない魔女の呪いを受け継いでいるらしい。
経緯はどうあれ、アイリーンは自分をあの家から救い出してくれたことや、呪いに関して噓をつかないフレデリックの誠実さから、徐々に彼に惹かれていく。しかし同時に、彼から愛されたいと思い悩むようになり、アイリーンはフレデリックの呪いを解く方法を模索し始めるのだった。
編集部より
ミーティアノベルス完全書き下ろし作品!
虐げられ辛い日々を過ごしていたアイリーンでしたが、突然身売りのような形で輿入れが決まります。相手は「人を愛せない」呪いを受けているというフレデリック侯爵。
少しずつ彼の人柄に惹かれていったアイリーンは、彼の呪いを解く方法を探し始めますが……?
アイリーンとフレデリックの二人が愛を見つける物語。続きはぜひ、本編をお読みください!