17の春、ぼくは姫と青い世界に旅立った - 森川恩
内容紹介
「秀重さまあーッ」
後ろから姫が叫んだ。そうか、ぼくの名は秀重というらしい。そして武士なんだ。ここでは、志摩一喜でもなく、高校生でもない。
どこかで落としてしまったが、烏帽子まで被っていたから、身分の高い侍なんだろうな。だからお姫様とデートしている……そうじゃない、逃げてるんだ。刀を振るう敵から……。
「あれを、ご覧になって……」
姫が立ち止まって、下を指差している。尾根の下に、ちょろちょろと、赤い舌のような炎が見えた。
「われらの館が焼かれている」
母を亡くした高校生の一喜は、その翌年に父の診療所にやってきた看護師の早恵に淡い恋心を抱く。食事の世話などをしてくれた彼女だったが、なにも告げずに突然いなくなった。悲しみに暮れる一喜。そんな彼に祖母は、風音岬で好きな人の名前を叫ぶと再会できると教えてくれた。
一人旅に出た一喜は、緑の髪の破天荒な娘、ミオと出会う。なんでもミオは前世で生き別れた恋人に会うため、青い世界へ行くと言うが――。
編集部より
スターダストノベルス書き下ろし作品!
高校二年生の一喜が、温泉宿で見た不思議な夢から目覚める場面で始まる本作。
彼が見た夢は何なのか。彼はどうして温泉宿に一人で泊まっているのか。
すこしずつ全体が見えてくる構成のなか、色が印象的に用いられていて、読み手に不思議な感覚を生じさせます。
現代、過去、そして「青い世界」と「赤い世界」をめぐる伝奇物語をぜひお楽しみください!