メタバースに行ったら、大好きなヒーローやロボが敵だった件 - 吉田けんじろう
内容紹介
「ここは……？」
岩に体をあずけて座った広瀬は不安げに辺りを見まわす。
「今いるのは、たぶん、メタキングダムだと思います」
「メタキングダム？」
賢人は大きく頷いた。
「じゃあ、ログアウトすれば戻れるのね」
「いや、それが……体ごと転移されているので、それはできないんです」
その言葉に広瀬の顔から血の気が失われていく。
広瀬の無事がわかった賢人は、どうにかメタバースから二人で脱出できないかと必死で考えた。
「そうだ、スマホでメタスフィア社の誰かに電話して、コントロールルームで操作してもらおう」
賢人はヒップポケットに手をやると、自身のスマホを取り出した。しかしモバイル通信のアンテナもＷｉＦｉの無線レオンも表示されていない。電話やチャットも試したが使えなかった。
「どうしよう、他に方法が……」
賢人が途方に暮れていると、広瀬が言った。
「秘密の抜け道とかはないのですか？」
新田賢人は新型多目的メタバース内の王国『メタキングダム』を開発する一員だ。ある日、清楚で可愛らしい３Ｄデザイナー、沙也加とともに本番サーバーとは別の待機サーバーのメタバース世界に体ごと入り込んでしまった！
しかも、二人が入ったメタバース空間は３時間後に初期化が予定されている。それまでに元の世界に戻れなければ、二人は存在ごと消滅してしまうかもしれない。しかし、元の世界に戻るためのエントリーカプセルが見当たらない――。
戦闘ロボに追いかけられ、正義の味方のはずのライダーからも攻撃されて沙也加がさらわれてしまった。
賢人はこの世界で出会ったメンバーたちの協力のもと、沙也加を助けるための力をつけていく。
二人は無事に元の世界へ戻ることができるのか――！？
編集部より
スターダストノベルス書き下ろし作品！
メタバース世界に閉じ込められてしまった賢人と沙也加。3時間（ただし、現実世界の一分間≒メタバース世界で二時間）というタイムリミットの中で、大好きだった戦闘ロボやヒーローからも攻撃を受ける過酷な状況に追い詰められる二人ですが、メタバースの中で出会った人たちの協力を得て奮闘していきます。
果たして二人は、メタバース世界から脱出するための脱出カプセルを見つけることができるのか――結末はぜひ、本編をお楽しみ下さい！
