逆プロポーズした野獣公爵に溺愛されました - 氷雨そら
内容紹介
「お願いします! 私を妻にしてください!」
私は振り返り、必死の形相で後ろに立っていた男性に懇願した。ただただ必死だった。
男性の金色の瞳が大きく見開かれる。初めて会った時に冷たく感じた鋭い光を放っていた瞳は、見開かれると長いまつげが際立ち、少し可愛らしい印象になった。
(……っ、なんて美しい瞳なの)
その金色に輝く瞳の中には、真っ白な私の姿が映り込んでいる。それは、母国で父や妹だけでなく使用人たちにまで、『ぼんやりしている』『雪や氷のように冷たく醜い』と馬鹿にされていた姿だった。
私の国では、金や黒などのはっきりした色合いが好まれ、白やアイスブルーのような薄い色合いは醜いとされている。
だから、目の前に立つ男性を改めてきちんと見て、本当に凜々しく、美しいと感じてしまった。
(こんな素敵な人に結婚を申し込んだなんて……。でも、私にはあとがないもの!)
ローレンシア王国第八王女のフィリアーナは、生まれた時から精霊に愛されていた。
精霊に愛されるがゆえに、感情が高ぶると周囲を凍らせ雪を降らせてしまうので、ローレンシア王国では不吉な姫として家族や使用人から虐げられ、城内に隠されるようにして過ごしていた。
そんな折、長きに渡り続いた隣国ルビアンツ王国との戦争を終結するための和平の象徴として、フィリアーナがルビアンツ王国の王族へ嫁ぐことになった。ほぼ厄介払いのようなものだったが、フィリアーナはルビアンツ王国でなら幸せになれるかもしれないと淡い希望を持って自国を後にした。
しかし、フィリアーナの結婚相手になる予定だった第二王子にはすでに恋人がおり、フィリアーナと結婚はできないと宣言したのだ。
だが、ルビアンツ王国としても和平のためフィリアーナを送り返すことはできず、唯一未婚の王族である現国王の弟ジェラートとの婚姻を提案してきた。
このまま祖国へ帰れば今まで以上にひどい仕打ちが待っている。そう考えたフィリアーナは、この国で野獣公爵と忌避されているジェラートとの婚姻を受け入れる。一方、ジェラートも最初は渋るものフィリアーナの懇願に負け、妻に迎えることを承諾したのであった。
妻として愛されることを諦めていたフィリアーナだが、ジェラートの屋敷で待っていたのはつらく悲しい日々ではなく、温かく幸せな毎日と彼からの溺愛で……。
これは精霊に愛されながらも不遇な境遇を持つ王女と、戦争を勝利に導きながらも周囲に野獣と呼ばれる公爵の幸せな結婚の物語。
編集部より
ミーティアノベルス書き下ろし作品!
精霊に愛されていたが故に、周囲から不気味がられ疎まれていたフィリアーナ。人質のように他国に嫁がされることが決まり、遠路はるばる向かってみれば相手には婚約者が。
人質としての役目すら果たせずに国へ戻れば生涯幽閉されてしまうと焦る彼女は、「戦いしか知らない」「野獣公爵」などと呼ばれる王弟・ジェラートに結婚を申し込みます。『お飾りの妻』でよければ、と承諾を得た彼女は彼の屋敷で暮らすことになり……
精霊姫と野獣公爵の結婚生活の行方は――? 続きはぜひ本編をお楽しみください!