月に着くのはだれでしょう? - 遠山海月
内容紹介
人間は誰も知らないのだけれど、六十年に一度だけ空に浮かぶあの月が地球のすぐそばまで近づいて来る日があるのです。
それはそれはものすごくそばまで、なにしろ夜空の半分が月になるほど近づいてくるのです。
六十年に一度、七月の満月の真夜中のほんのすこしの時間にそれは起こるのです。
大きな月の引力の影響で人間はみんな眠ってしまうのでだれも知ることがないのです。
そして人間以外の動物たちはいきいきと目を輝かせるのです。
体中に力がみなぎってとても活発になるのです。これもまた人間はだれも知らないのだけれど、その夜、富士山のふもとにある深い森の奥では動物たちが集まって競争が行われるのです。
『月高飛び』という競争です。
森の奥の高台に月のお姫様を祭った『月姫神社』という御社(おやしろ)があり、その周囲に、幅三メートルほどの深い深い穴が五個、御社をとり囲むように空いています。
月が地球にもっとも近づいた瞬間その穴から地下水が勢いよく吹きだしてくるのです。
その勢いはとても強くて巨大な水の柱となって空の上のはるか遠くまで吹き上がるのです。
この地下水の勢いにのって月に向かって飛んでいくのが『月高飛び』です。
我こそはという勇敢な動物たちが誰よりも高く飛びあがろうと競うのが『月高飛び』なのです。
毎回誰もがこの水柱にのって月まで行こうと競い合ってきましたが、これまでただの一匹も月面まで届いたものはいないのです。
第3回童話と絵本コンテスト 優秀賞受賞作品
60年に1度の『月高飛び』の夜。
これまで誰も成し遂げられなかった月面までの到着を目指す4匹の選手たち。
それぞれの秘策を胸にいざ。
テレビ局も生中継する大舞台で見事に飛んで月姫様の祝福を受けることができるのは一体誰でしょう?
編集部より
キツネとウサギとクマとタヌキとモモンガによる熱く激しい月までのレース。
一体だれが勝つのか? どうやって勝つのか?
最後のどんでん返しを見逃すなッ!