向井川と申します。- 奈木野ここち
内容紹介
母さんに言われて、私学の中学を受験した。父親は金属メーカーの社長で、あなたもお父様みたいになるのよが、母さんの口癖だ。
父さんみたいに?
家庭よりも仕事を大切にしてる人みたいには、なりたくない。子どもが大変な時に声ひとつかけられない男になんか、なりたくはない。
社会的に立派だろうと、僕は嫌だ。
だけど、僕には反抗することもできないだろうし、母さんが悲しむのも見たくない。だからなんでも「はい」と言っておけば、物事は進んでいくんだと、中学の時はそう思っていた。
「たくみ、みんなすごいおしゃれしてるのよ。あなたもそんな恰好ではだめだと思って買ってきたわ」
そういって、僕の胸にあてられたのは、きっちりとした襟が付いた、薄い水色のワイシャツだった。
それは、高校2年の今になっても同じだった。僕が服を素直に着れば、母さんは喜ぶし、平和に過ごしていける。
僕に彼女ができたときは、学校に来て彼女の素行調査までしたおかげで、彼女とは別れ、マザコンだという噂までたった。挙句の果てには、車で学校までの送り迎え。
壊してやる。
こんな生活、一瞬にして壊してやるんだ。
僕は無意識に本屋に入り、雑誌を手に取った。周りを見回して、それをカバンに入れたときだった……。
第8回星の砂賞 審査員特別賞受賞作品
『向井川と申します。』
こんな生活壊してやる!!!
もんもんとしてるところに、
変な人と出会った……。
編集部より
「父親のような立派な人になりなさい」、そう母親に育てられ、日々の生活を縛られ、ついに限界を迎えた僕。
万引きをして母親なんか失望させてやる!
……と思った矢先に、僕の手を掴んだのは……黒服に黒サングラスの、変な人……。
毒親に苦しめられる「僕」に生き方を導いてくれるのは、少し変わった「向井川さん」。
迷う僕と、僕を束縛する母親の、本当の愛が試されるハートフルストーリーです。
- 作者: 奈木野ここち
- 出版社/メーカー: ネット文庫星の砂
- 発売日: 2019/09/25
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